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偽装 ― コンシャスとアンコンシャスのすき間 

 人が好き嫌いを判断したり何かを選択するのに要する時間はそれほど長くないらしい。
 たくさんの種類のペットボトル飲料から「これだ」と選ぶ時も、人はそれほど時間をかけずに取捨選択を行なう。
 筆者が先程コンビニで購入したのは「茶織(さおり)」という緑茶。お茶を買うことは最初から決めていたとして、今日はなぜ「伊右衛門」でも「生茶」でもなくコレだったのか。自分がなぜコレを手に取り購入まで至ったのか、購入した後に改めてしみじみ考えてみるのも面白い。
 パッケージの色や名前や字体、以前飲んだ時の味や今朝見たCM、多様なペットボトルの形(以前はどれもほとんど同じだったけれど最近急速に個別化が進んでいる)…これらのデザインと記憶を参照しながら、それはもう「ものすごい速さ」で比較検討がなされ判断が下されている筈だ。
 しかしその高速の比較検討の過程を我々が意識することは少ないのではないだろうか。少なくともまずはじめに「パッ」と手に取るその時までは、我々は完全には意識的な状態ではなく、意識的と無意識的の中間位の状態にいることが多いと思う。
 そのためか、例えばそのお茶の原料が「中嶋農法」という方法で栽培されたことなどこまごまとしたこと(そして購入理由として実はあまり本質的ではないこと)は、購入後、あるいは実際に飲みながら、しみじみとパッケージを眺めて初めて気が付くことも多い。
 おそらく、どのペットボトル飲料を選ぶかといった「どれでも大して変わらない」買い物をする作業は、ある程度アンコンシャスなプロセスなのだろう。

 普段は何気なく眺めている商品の群れを、もう少しだけ意識レベルを上げて眺めてみると、売り場をひと回りするだけでもいろいろな発見があって面白い。
 消費者の目を留め手を伸ばし買ってもらうために、よく考えられた商品は細部にわたり綿密にパッケージングが施され、消費者へ向けて懸命にアピールをしていることに気が付くだろう。
 
 しかしここで重要なのは、我々はアンコンシャスに商品を選ぶ場合がある一方で、逆に非常にコンシャスに商品を選別する場合も少なからずあるということだ。
 我々はアンコンシャスな状態とコンシャスな状態を行き来しながら買い物をする。しかもその意識レベルは、「わりとアンコンシャス」か「非常にコンシャス」かのどちらかにはっきりと二分できるかも知れない。
 ペットボトルの緑茶はわりと適当に選んだ人が、その直前に弁当を選ぶ時には(その中身やカロリー、おかずの好き嫌いなどを比べながら)かなり時間をかけて厳選することは充分あり得るのだ。
 
 食品の場合、中身は購入後に消費されるのが普通だし、しょっちゅう試食ができるわけでもない。だからこそ消費者は「パッケージング=顔」を見て選ぶしかなく、だからこそその「顔」を偽ることは許されないのだ。
 食品の「ブランド」とはアンコンシャスなレベルで我々に《信頼感》を与えるものであるし、つい最近まで「中国製品」はアンコンシャスなレベルで《安価》をアピールできれば充分だった。これまではとりあえずそれだけで、消費者は手に取り、少なくとも選択の俎上にのせてもらうことができた。けれどひとたびその「顔」と「中身」をコンシャスなレベルで吟味し始めてみると、次から次へと《嘘》や《毒》があふれてきた、というのが昨今の状況だ。
 偽装(擬装)とは、我々が物を選ぶ時のコンシャスな状態とアンコンシャスな状態の間に隙あらば潜り込もうとする、悪質かつ捕らえ難い誤ちに他ならない。

-----Zoom In Zoom Out-----

一目ぼれに必要なのは0.5秒=米研究

■「サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ
下條 信輔
中央公論社

■現代思想 2007年11月号 特集=偽装の時代

世界初の顔面移植手術を受けた女性、1年半ぶりに心境を語る
自分の「顔」が全く別人のものになってしまった時、その人は何を思うのだろうか
[ 2007/11/08 22:26 ] TB(0) | CM(0)
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 「科学と芸術、そして人間。」をテーマに、さまざまなものごとについて考えるブログです。特定の領域というよりも、領域と領域どうしの境界面のそのたたずまいに焦点を当て、張り過ぎず緩め過ぎず可能な限りバランスのとれた考察を深めることをめざしています。

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 1976年生まれ。東京都在住。自称、逍遙学派。歩きながら考えることで何かが見えてこないかと、今日も歩きながら考えている。このブログも文章のほとんどを、歩きながら携帯電話にて入力し、推敲を重ねている。

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